2026-04-24
猫の通院——キャリー選びから夜間救急、血液検査の読み方、治療費の現実まで
第 5 章 / 全 7 章
第五章 血液検査結果の、基本的な読み方
獣医は、検査結果を、手短に、説明する。
「クレアチニンが、少し、高めですね。腎臓のフォローを、半年後に」。これだけで、診察が終わることも、多い。信者は、それで、納得して、帰る。しかし、自宅で、紙の結果を、広げて、眺めたとき、何が、高いのか、低いのか、基準値の、どの位置にいるのか、理解できないまま、不安だけが、残ることが、よくある。
◆ 主要項目の、基準値と、読み方(成猫の、目安) ◆
| 項目 | 基準値の目安 | 高い時に疑う | 低い時に疑う |
|---|---|---|---|
| BUN(尿素窒素) | 17-35 mg/dL | 腎機能低下、脱水 | 肝機能低下、低タンパク食 |
| クレアチニン | 0.9-2.0 mg/dL | 腎機能低下(IRIS分類の主指標) | 筋肉量の低下 |
| SDMA | 0-14 μg/dL | 腎機能低下の早期指標 | — |
| リン(P) | 3.0-6.3 mg/dL | 腎機能低下、骨代謝異常 | — |
| ALT(GPT) | 22-84 U/L | 肝機能低下、胆管肝炎 | — |
| T4(サイロキシン) | 0.8-4.0 μg/dL | 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺機能低下症 |
| 血糖(Glu) | 70-150 mg/dL | 糖尿病、ストレス性高血糖 | インスリノーマ、重度肝機能低下 |
| PCV/HCT(ヘマトクリット) | 30-45% | 脱水 | 貧血(慢性腎不全の進行サイン) |
基準値は、検査機関により、若干、異なる。必ず、結果表に記載の基準値と、比較する
1. BUN(尿素窒素)
タンパク質の、代謝産物である。腎臓で、濾過され、尿中に、排泄される。腎機能が低下すると、血中に、溜まる。
- 高い(40以上)——腎機能低下、または、脱水、高タンパク食の影響
- 極めて高い(80以上)——尿毒症の、危険域
ただし、BUNは、脱水だけでも、上がる。クレアチニンと、セットで、見る。
2. クレアチニン
筋肉の、代謝産物である。腎臓で、濾過される。IRIS(国際腎臓病研究会)の腎臓病ステージ分類の、主指標。
- 1.6 mg/dL 未満——正常、または IRIS Stage 1(初期)
- 1.6-2.8——IRIS Stage 2(軽度)、ラプロス等の開始を検討
- 2.9-5.0——IRIS Stage 3(中等度)、療法食+皮下輸液を検討
- 5.0 以上——IRIS Stage 4(重度)、集中的な緩和ケア
ただし、痩せて筋肉量が減っている場合、クレアチニンは、低めに出るため、過小評価に注意。
3. SDMA(対称性ジメチルアルギニン)
腎機能の、早期指標である。クレアチニンより、早く、腎機能低下を、検出できる。
- 0-14 μg/dL——正常
- 15-19——腎機能低下の初期兆候、再検査推奨
- 20 以上——腎機能低下が、明確
SDMAが上がって、クレアチニンが、まだ正常範囲内、という状態が、IRIS Stage 1の、典型である。この段階で、食事管理や、水分摂取の工夫を、始めると、進行を、遅らせられる。
4. リン
慢性腎不全の、進行と、強く相関する。腎機能が低下すると、排泄が、追いつかず、高リン血症になる。
- 6.3 mg/dL 以下——正常範囲
- 6.4以上——療法食(低リン食)や、リン吸着剤(ザントール等)の検討
5. ALT(GPT)
肝細胞の、健康度を示す。肝細胞が壊れると、血中に、漏れ出す。
- 84 以下——正常
- 100 以上——肝機能の異常を疑う
6. T4
甲状腺ホルモン。高齢猫で、甲状腺機能亢進症が、多い。
- 0.8-4.0 μg/dL——正常範囲
- 4.5 以上——甲状腺機能亢進症を、強く疑う
食欲過多、痩せるのに活発、被毛が荒れる、という症状があれば、T4は必ず、測定する。
7. PCV / HCT
赤血球の、全体に対する割合。貧血の、指標。
- 30-45%——正常範囲
- 25以下——貧血、慢性腎不全の進行(エリスロポエチン産生低下)
慢性腎不全のシニア猫で、PCVが、徐々に下がっていく、というパターンは、予後を示唆する、重要な指標である。
結果の、読み方——三つの、原則
原則1:単一の数値で、判断しない
複数の項目を、組み合わせて、読む。
例:クレアチニンとBUNが、両方とも高い → 腎機能低下 BUNは高いが、クレアチニンは正常範囲 → 脱水、または高タンパク食の影響
原則2:時系列の、推移を見る
1回の結果より、3回以上の、推移が、重要。
獣医から受け取った、過去の結果表を、ファイリングしておき、次の検査で、数値の上下を、比較する。クレアチニンが、3ヶ月で、1.5→1.7→1.9 と、緩やかに上昇、なら、IRIS Stage進行を、疑う。
原則3:数値だけで、神の調子を、決めない
数値は、神の、身体の、一部である。全体では、ない。
数値が、悪くても、神が、食べて、歩いて、光の儀を行っていらっしゃるなら、生活の質は、保たれている。逆に、数値が、比較的良くても、食欲や元気がなければ、他の疾患を、疑う。
数値と、日々の観察の、両方を、並べて、見る。これが、第五訓「猫との時間を大切にせよ」の、医療現場での、実装である。
定期健診の結果を、読めるようになったら、次は、急変時の、判断である。