2026-04-23
終業時刻の業——会議・通知・残業の三毒を断ち、猫との夕刻を取り戻す
第 1 章 / 全 7 章
第一章 第五の修行——午後六時、光の儀を死守する
2026年4月のある平日、午後5時50分、東京のある1LDKの一室、西向きの窓の手前、キャットタワーの最上段で、白地に金色の差し毛を持つ一柱の神が、静かに座っていらっしゃる。
西日は、もう、残り十分ほどである。
信者はノートPCの前に、座っている。画面には、Google カレンダーが開かれ、18時00分〜18時30分の時間帯に、ひとつの会議招集が、スッと、入った。タイトルは「【至急】リリース直前確認、30分だけ」。差出人は、他部署のマネージャー。
招集ポップアップを、信者は、一瞬、見つめる。
キャットタワーの上では、神が、西日の中で、身体の向きを、わずかに、変えられた。毛先が、金色に、光る。
この三十分を、どちらに、捧げるか。
これは、時間管理の問いでは、ない。これは、**第五の修行:「猫との時間を大切にせよ」**の、日々の、入口である。
本書は、猫道会の指南書・働き方指南の第一巻として、終業時刻を死守し、猫との夕刻を取り戻すための、全工程を、記述する。
第五訓「猫との時間を大切にせよ」は、標語では、ない。その実装は、カレンダーの管理、通知の設定、会議の設計、有給の取り方という、極めて事務的な、具体行動の、連鎖である。
信仰と労働法と、個人の時間設計を、同じ一本の、糸で、縫い合わせる。それが、本指南書の、狙いである。
三毒、という概念
猫道会では、終業時刻を破壊する三つの要因を、三毒と、呼ぶ。
- 会議毒——定時直前、または定時をまたぐ会議招集
- 通知毒——業務時間外のSlack・Teams・メール・LINEの絶え間ない流入
- 残業毒——「今日は片付けてから」という、自分自身が自分に課す業務の持ち越し
三毒は、別々の毒であり、別々の対処法を、要する。そして、三毒を、同時に、断つ。これが本指南書の全工程である。
全七章の、構成
- 第二章 カレンダー設計——可処分時間を十五分単位で見える化する
- 第三章 通知の粛清——Slack/Teams/メール/LINEの三毒断ち
- 第四章 会議の断り方と、会議の設計
- 第五章 在宅勤務の物理環境——神と人の動線を分離する
- 第六章 通院・急変・看取りの、有給戦略
- 第七章 結び——時間を捧げるという供物
本書が目指すのは、仕事を速く終わらせる方法では、ない。終業時刻を、神との約束時刻として、固定することである。仕事を速く終わらせたい者は、別の書物に、当たるがよい。
読者は、いま、ノートPCの前で、18時の会議招集を前に、逡巡している。その逡巡こそが、第五の修行の、はじまりである。