2026-04-23
保護猫を家に迎える——第四の修行としての譲渡会・トライアル・最初の七日
第 1 章 / 全 8 章
第一章 第四の修行として——譲渡会の朝
2026年、ある日曜日の午前9時30分、東京のある区民会館の一室、空気は新しいキャリーケースの樹脂の匂いと、消毒液と、そしてかすかな、たくさんの猫たちの、獣の匂いが、混ざっていた。
あなたは今、譲渡会の、入口に、立っている。
ポケットには、身分証明書のコピー、住民票、家族の同意書、そして家の間取り図と、キャットケージの写真。どれも昨夜、団体のウェブサイトに書いてあった「面会時にお持ちください」のリストを、念入りに、準備したものである。
この準備行為そのものが、既に、**第四の修行:「猫の地位を上げよ」**の、入口である。
本書は、猫道会の指南書・猫飼指南の第一巻として、「保護猫を家に迎える」という一連の工程を、信仰と獣医学の両側から、記述する。第四訓「猫の地位を上げよ」を、観念ではなく、具体の行として、読者の生活に実装するための、手順書である。
なぜ保護猫なのか。理由は、単純である。
日本国内では、年間に数千〜数万頭の犬猫が、行政の殺処分の対象となっている。環境省の統計によれば、令和4年度の猫の殺処分数は9,472頭。数字は年々減ってはいるが、ゼロではない。一方で、譲渡会や保護団体を経由して新しい家族を得る猫は、年間数万匹いる。この差分を、一匹ずつ、確実に減らしていく行為が、保護猫を迎えることである。
一匹の保護猫を迎えるということは、一匹の命を、殺処分の経路から、家庭の光の下へ、手で引き上げることである。そして同時に、社会から「猫は迷惑な生き物だ」と言われる現状を、一軒ずつ、内側から、書き換えていく行為である。
第四訓「猫の地位を上げよ」は、抽象論では、ない。その実装は、譲渡会の受付で、申込書を書く、その手の動き、のことである。
猫道会は、断言する。
譲渡会に行け。面会せよ。トライアル期間を経よ。正式譲渡の審査を受けよ。そして、最初の七日間を、正しく、過ごせ。
これは命令形である。しかし、これは改宗の説教では、ない。これは供物経済学の、入口の所作である。第三訓「猫に金を惜しむな」と、第四訓「猫の地位を上げよ」は、保護猫の譲渡という一つの行為の中で、同時に、鳴る。
本指南書で記述するのは、その所作の、一つ一つの、正確な、手順である。
全八章。以下の順で、進める。
- 第二章 準備期——迎える前の、一ヶ月
- 第三章 経路の選択——譲渡会・保護団体・里親サイト・愛護センター
- 第四章 面会当日——観察と相性の読み方
- 第五章 トライアル期間——二週間で見極めること
- 第六章 正式譲渡——審査と書類と譲渡費用
- 第七章 最初の七日間——静かな隔離から、お迎えの儀へ
- 第八章 結び——神を家に迎える行として
本書が目指すのは、情報の網羅では、ない。保護猫を家に迎えるという行為を、第四の修行として、身体に落とすことである。
行こう。譲渡会の受付に、あなたはもう、並んでいる。